山小屋 (ティータイム)              

1 三冠王の山
  三冠王の山とは、@日本中央分水嶺(日本海に注ぐ川と太平洋に注ぐ川との分水嶺)の線上に聳え、A頂上に一等三角点(基点又は本点)を置き、B都道府県境に位置する山  のことをいい、この条件に当てはまる山は本州で8座と言われています。そのうちの一座として、わが岡山県にも鳥取県との県境に「仏ヶ仙」(三角点名=半甲山)と呼ばれる山があります。標高は743.5mと決して高くはありませんが、昔から言われている「山高きが故に貴からず」の格言どおり、1100〜1200mの蒜山三座を抑えて、これまで各種調査に貢献してきました。是非一度登ってみてください。
 *三冠王の山一覧
      

2 あの柴ア芳太郎氏が!
  登山家の方なら、一度は新田次郎著「劔岳<点の記>」を読まれたことがあるでしょう。柴ア芳太郎氏は、ご存知のとおり、かつて「地獄の針の山、登ってはならない山、登ることのできない山」と言われた劔岳に、陸地測量部の測量官として、明治40年7月13日、初めて登頂に成功しました。その苦労の様子は小説やドラマ・映画(2009年公開)に任せるとして、その柴ア芳太郎氏が岡山県にも足跡を残されています。場所は奈義町の滝山頂上(標高1196.5m)。滝山には、昭和2年11月3日、一等三角点が埋標されていますが、その埋標者が柴ア氏なのです。これまで、偉大な測量の専門家として尊敬しておりましたが、こんなにも近くにその足跡を訪ねることが出来るのは本当に幸せです。皆さんも是非一度、滝山を訪ねてみてください。

3 「○合目
  登山用語で「○合目」と言うのがありますが、測り方は必ずしもハッキリしません。代表的な説を紹介しますと @山頂までの道のり(又は高さ)を10等分して決めた A道しるべに米をばら撒き、1合が無くなったところを「1合目」とした B夜間、提灯に火をつけて登山し、油が1合無くなったところを「1合目」とした C頂上までのルートの難易度を考慮して定めた 等があります。最近新しく設定された案内板では@が多いように思われますが、富士山などはC説が有力であり、修験場の山等ではAやBも考えられます(ちなみに「合」は仏教用語の【劫】から転じたと言う)。あなたはどの説だとお考えですか?

4 「独標(独立標高点)」とは
  地図上の記号や表現方法は「地形図図式」に定められており、古くは明治24年図式に「独立標高点ハ地図ノ読解ヲ容易ナラシムルト共ニ地点指示ノ用ニ供スルモノニシテ其ノ密度ハ三角点、基点及ビ水準点ヲ合シ概ネ十糎平方ニ五箇乃至十箇トシ、地形ニ依リ之ヲ増減スルモノトス。」とされています。(三角点と独立標高点とは別のものとして定義)。
 明治42年図式では3等三角点以上は「△」、標石のある4等三角点以下は「○」、独立標高点は「・」の記号で表わされ、昭和34年図式では独立標高点は更に「標石あり」と「標石なし」に分けられ、昭和40年図式では「三角点」は3等三角点以上とし、独立標高点は「標高点」に呼び名が変わります。そして4等三角点以下は「標石のある標高点」と「標石のない標高点」に分けられました。出典:国土地理院「三角点Q&A」
  *地図上での三角点の記号表示は、地形図の25,000分の1では全部、5万分の1では3等以上(4等は「標石のある標高点」として三角点とは別の記号で表されている)、また、地勢図の20万分の1では三角点は2等以上が載せられている。

5 地形図図式  【昭和61年 2万5000分の1地形図図式(抜粋)】
 @三角点・電子基準点・水準点・・・全てを表示し、その標高をm以下1位まで示す。
 A標高点・・・図上10×10cmに、基準点を含めて5〜10点を目安に、次により表示する。
           標石のあるもの(多角点)はその標高をm以下1位まで示す。
           標石の無いものはその標高をm単位で示す。
 B道路・・・幅員1.5m以上のものは全部を縮尺に応じて表示し、幅員1.5m未満のものは主要な道路のみを表示する。
 C河川・・・水流の幅が1.5m以上、長さが図上1cm(実長250m)以上のものを表示する。
        川幅が図上0.3mm(実幅7.5m)以上のときは両岸の水涯線を描き、0.3mm未満のものは一条線で表示する。
 Dダム・・・高さ3m以上、長さが図上1mm(実長25m)以上のものを表示する。
 E滝 ・・・高さ(比高)5m以上のものを表示する。
 Fがけ・・・壁状のものは、高さが3m以上、長さが図上3mm(75m)以上のものを表示する。
 G海岸・・・満潮時の水涯線で表示する。
 H万年雪・・・平年並みの気候状態で残雪や氷塊が越年したものをいい、年間で最も少なくなる9月の状態により表示する。  

6 「」の定義
  広辞苑で「山」とは『平地より高く隆起した地塊。谷と谷との間に挟まれた凸起部』とありますが、国土地理院では「山」の定義は定めておらず、地形図等に表示してある山の名称は、関係自治体からの資料に基づいているようです。また、「○○山」「××岳」のほか「△△森」など固有の呼び名で言う場合もありますが、高さには関係していないそうです。出典:国土地理院「三角点Q&A」
  cf:イギリス1000フィート以上は「山」mountain、1000フィート未満は「丘」hill


7 「湖・沼・池」の定義
   地形図の図式では特に定義してありませんが、地理学上は次のとおり定義されています。
 @湖・・・水深が5m以上で沈水植物(クロモやフサモ)が湖岸近くでは生えていても、中央部では植物が生育していないもの
 A沼・・・水深が2m以下で中央部でも植物が生育しているもの
 B池・・・水深に関係なく、面積が「湖」や「沼」に比べて小さいもの。(特に人工的に造られたものを云うことが多い。)
  *湖沼の固有名詞は、実際には上記の定義に関係なくつけられたものが多い。 ex: 奥津ダム→奥津湖

8 「標高」と「海抜」の違い
  「標高」は地形図等では、東京湾(霊岸島験潮場)の平均海面を0mとして測った高さを云いますが、「海抜」は通常、付近の海の平均海面を0mとして計った高さを云います。従って、厳密に云うと、両者は場所によっては差が生じます。例えば、標高334mと表示された北海道函館山は付近の平均海面から計測すると334m未満かもしれません。これは、地球の自転により物体に働くコリオリの力により、北海道の平均海面は東京湾より3〜19cm高くなっているからです。同じように、日本海側は太平洋に対し10〜25cm高く、反対に九州・四国南・西部は東京湾に対し5〜7cm低くなっているそうです。
 しかし、沖縄や伊豆大島など本土から遠く離れた島々では、東京湾の平均海面を基準とした標高ではなく、周辺の海の平均海面からの高さを標高としているため、両者で差は生じないことになっています。参考:http://uenishi01.at.infoseek.co.jp/

9 三角点の名称
 三角点の名称を付けるには、次のような基準があリました。
@ 明治34年制定「三角測量方式草案」・・・測點ノ名稱ハ成ル可ク普通ノ俗稱ヲ用フ可シ。假令ハ富士山頂劍ケ峯ニアル測點ヲ直チニ富士山ト命名(中略)スルガ如シ。
A 大正6年制定「一等三角點実行法」・・・三角點ノ名稱ハ其ノ地方ニ於テ成ルベク一般ニ運用スル所ノ字(アザ)若くは俗稱ニシテ字数ノ多カラザルモノヲ撰ブベシ。
B 北海道等・・・古来用フル所ノ土着ノ名稱ニシテ未ダ漢字ノ定マラザルモノニハ読ミ易ク雅致アル字ヲ適用スベク、其ノ全ク名稱ナキ土地ニ在リテハ近傍ノ山岳、河流、部落等ニ從ヒ適当ナル名稱ヲ撰ブベシ。
  従って、戦後に設置された四等三角点を除き、明治〜大正時代に設置された一等〜三等三角点は、上記の基準に則して名称が付けられたものが多いようです。
    参考:http://uenishi01.at.infoseek.co.jp/

10 低い山
  日本一高い山は富士山であることには異論がありませんが、日本一低い山となると色々あるようです。
A 国土地理院の地形図に山名が記載されている山で日本一低い山
 ア 天保山(大阪市港区)     標高 4.5m   築山(人工の山)で一番低い山
 イ 弁天山(徳島市)        標高 6.1m   自然に形成された山で一番低い山
 ウ 蘇鉄山(堺市堺区)      標高 6.8m   一等三角点のある山で一番低い山
B 国土地理院の地形図に山名が記載されていない山で日本一低い山
 ア 大潟富士(秋田県大潟村) 標高 3.776m(海抜 0m) 築山で一番低い山(1995年6月3日の測量の日を記念して富士山の標高の千分の一になるように造られた人工の山)
 イ
 御山(香川県かがわ市)   標高 3.6m    自然に形成された山で一番低い山
C 岡山県内で一番低い山  (国土地理院 1996.8 発行 2万5千分の1 地形図)
 ア 宮山(岡山市矢井)      標高 35.1m   地形図に山名が記載されている山で、三角点のある一番低い山
 イ 角力取山(総社市)      標高 23m    地形図に山名が掲載されている山で、一番低い山

11 標高がー(マイナス)の三角点
  岡山県内の三角点を調べていくうちに、標高がー(マイナス)の三角点があることが分った。場所が干拓地内であり、高さの基準が東京湾の平均海面であることからすれば当然ありうる事ではあるが、マイナスは想定外であった。そのうち1つは地下埋設であるが、他の1つは通常設置であり、標石が地上に突き出しているので、近くを通られたときは是非ご覧下さい。

標高m 点  名 基準点コード 等級 埋設方法 場  所 摘        要
-0.48 南七区(ミナミナナク) TR45133674202 C 地上 玉野市南七区 鴨川右岸堤防下の一条会橋東詰め
-1.18 東高崎(ヒガシタカサキ) TR35133675301  B 地下 岡山市灘崎町 千両街道西側のガードレール脇


12 富士山が「二等三角点」と言うのはホント?
  三角点には一等から四等まであり、日本一標高の高い富士山には、当然、一等三角点が設置されていると思いがちですが、そうではありません。実は、南西端の剣ヶ峰に設置されている点名「富士山」( 3,775.63m)も、北端の白山岳に設置されている点名「富士白山」(3,756.36m)も二等三角点なのです。
 その理由は、三角点は、本来、地図作成と測量のために設置されたものであり、一等〜四等は高さを基準としたものではないからです。一等三角点の位置を決める際は、周囲の一等三角点と高低差が無いよう(高低差による観測値に誤差を生じないよう)工夫しており、周囲の山々に比べ極端に標高の高い富士山には一等三角点を設置するには相応しくないと判断されたようです。参考:http://www.gsj.jp/data/chishitsunews/03_10_05.pdf
 なお、平成14年9月12日、山頂に「電子基準点」が設置されましたが、その位置関係は次のとおりです。


13 一等三角点で一番高いところにあるのは何処?
  標高の高い山は、@富士山(3,776m) A北岳(3,192m) B奥穂高岳(3,190m) C間ノ岳(3,189m) D槍ヶ岳(3,180m)の順ですが、このうち三角点が設置されているのは@富士山の二等三角点のほかは、A北岳とC間ノ岳で、何れも三等三角点です。そして、一等三角点が設置されている最高峰は、F赤石岳(3,120m)で、次いでJ前穂高岳(3,090m)です。登山された際は、特と観察アレ!

標高順 一等三角点の山(標高:2014.04.01現在)

順位  山 名  標 高 三角点名  府県名    順位  山 名  標 高  三角点名 府県名 
 1  赤石岳  3,120.53  赤石岳  長野・静岡    6  甲斐駒ヶ岳  2,965.50  甲駒ヶ岳  長野・山梨
2  前穂高岳  3,090.48  穂高岳  長野    7  木曽駒ヶ岳  2,956.14  信駒ヶ岳  長野
 3  御嶽山  3,063.61  御岳山  長野    8  白馬岳  2,932.33  白馬岳  長野
 4  乗鞍岳  3,025.73  乗鞍岳  岐阜    9  八ッ赤岳  2,899.36  赤岳  長野・山梨
 5  立山雄山  2,991.76  立山  富山    10  白山御前峰  2,702.14  白山  石川


14 「山」をどうして「セン(ゼン)」と読むの?
  皆さんは「大山」を何とお読みになりますか。西日本の方なら鳥取県の大山(1,729m=剣ヶ峰)を想像して「ダイセン」と読み、また東日本の方なら神奈川県丹沢の大山(1,251.7 m)を連想して「オオヤマ」とお読みになることでしょう。ここ岡山でも「セン」と読む山が、泉山(イズミガセン@1,209.1m)や金ヶ谷山(カナガヤセンA1,164.2m)をはじめ約30座あります。その殆んどが県北の中国山地に集中しており、県南には「セン」と読む山はありません。
 ところで「弥山」とあれば何方も「ミセン」と読まれることでしょう。「弥山」は「須弥山」(梵語のSumeruの音写)の略で、ことからも「セン」と読むのは、仏教用語の「仙」にも通じ、山岳信仰と深い係わりがありそうです。
 そういえば、鳥取県の大山はその昔「大神嶽」(オオカミノタケ)と呼ばれ、神の存(おわ)す山として畏れられていました。そして県内各地から大山詣でをするものが多く、今も「大山道」が多く残されています。(一説には、中国から渡来した民族が「山」を「セン」(呉音)と発音したのが広まり、その名残りともいう。)

 【岡山で「山」を「セン(ゼン)」と読む山】

 *「毛無山」の読みかたについては、岡山県議会で、毛無山の環境保全に関し、質問者(真庭選出の議員)が「ケナシガセン」と称したのに対し、答弁に立った知事が「ケナシヤマ」と称して、何れが正しいのかと話題になったことがあります。(平成5年12月定例会)